<20度近い温度差をどう解釈すべきか(4)>

<「20度近い温度差をどう解釈すべきか(3)」に続いています>


これまでのデータから、次のような発見と考察を行いました。数字は最新の観測値を踏まえて更新しています。

サマリー

1)千葉測候所が観測している千葉市の最高気温と、そこから約7キロ西北にある拙宅の「緑のカーテン」内の最高温度には、強い連動性(相関)がある。連動性を示すR²は0.9程度(1の場合は完全に連動)

2)ただし、千葉市の最高気温よりも、「緑のカーテン」内の最高温度の方が低くなる傾向がある。具体的には千葉市の最高気温が1度上がった場合にも、「カーテン」内の温度の上昇は0.9度程度にとどまる関係が見て取れる。

3)千葉市の最高気温と拙宅周辺の最高気温が等しいとすれば、上記の温度差は、「緑のカーテン」のあるなしに起因すると推定される。気温も「カーテン」内もともに、日射の影響は受けていないことから、温度差は、「緑のカーテン」の二つの効果のうち、葉が水分を蒸発させる際に「気化熱」を奪う効果(以後、気化熱効果)に相当するのではないか。(もう一つは日陰になる効果)


4)だとすれば、「カーテン」内外の温度差を①気化熱効果②日陰効果にわけて分析できるはず。

5)そこで、観測日ごとの「気化熱相当分」を算出した。

6)その結果、「カーテン」内外の温度差に占める「気化熱相当分」は非常に小さく、「緑のカーテン」の効果が主に、日陰効果であることが強く示唆されている。 


12日までのデータで作った
千葉市の最高気温と「カーテン」内の最高温度の相関
(数字はいずれもその日の最高気温、最高温度)
内外相関1.jpg
このグラフの青線部分が千葉市の最高気温と「カーテン」内の最高温度の関係を示しています。千葉市の気温を推計式f(x)=0.88x+3.45に代入して算出された推計「カーテン」内温度を、千葉市の気温から差し引くことで、「推計気化熱相当分」(「千葉市の気温」-「推計カーテン内」)が出ます。

以下、これまでの観測結果に適用した一覧表です。


千葉市の
最高気温

カーテン外

カーテン内

内外温度差
推計

カーテン内

推計気化熱
相当


暫定日陰
効果相当分

6月29日

35

38.3

34.1

4.2

34.25

0.75

3.45

6月30日

33.8

34.3

31.6

2.7

33.19

0.61

2.09

7月1日

33.7

36.5

32.1

4.4

33.11

0.59

3.81

7月3日

31.4

37

30.7

6.3

31.08

0.32

5.98

7月4日

30.8

33

30.5

2.5

30.55

0.25

2.25

7月5日

31.4

35.1

31.3

3.8

31.08

0.32

3.48

7月6日

32.1

38.7

32.6

6.1

31.70

0.40

5.70

7月7日

29.3

32.8

29

3.8

29.23

0.07

3.73

7月8日

30.2

29.4

28.1

1.3

30.03

0.17

1.13

7月9日

30.5

34.2

31

3.2

30.29

0.21

2.99

7月10日

31.5

35.3

31.5

3.8

31.17

0.33

3.47

7月11日

31.9

35

31.5

3.5

31.52

0.38

3.12

7月12日

31.6

35.4

31.8

3.6

31.26

0.34

3.26

7月13日

31.4

40.3

31.5

8.8

31.08

0.32

8.48

7月14日

32.3

42.6

32.1

10.5

31.87

0.43

10.07

7月15日

33

42.8

32.4

10.4

32.49

0.51

9.89

7月16日

31.8

40.6

31.3

9.3

31.43

0.37

8.93

7月17日

33.8

43.1

33.2

9.9

33.19

0.61

9.29

7月18日

32.4

36

30.7

5.3

31.96

0.44

4.86

7月19日

29.1

30

28.9

1.1

29.06

0.04

1.06

7月20日

30.1

34.5

29.8

4.7

29.94

0.16

4.54

7月21日

23.1

27.1

24.7

2.4

23.78

-0.68

3.08

7月22日

25.2

44

26.4

17.6

25.63

-0.43

18.03

7月23日

24.7

32.2

24.3

7.9

25.19

-0.49

8.39

7月24日

28.2

40.6

28.1

12.5

28.27

-0.07

12.57

7月25日

30.6

42.9

29.8

13.1

30.38

0.22

12.88

7月26日

29.5

34.6

27.6

7

29.41

0.09

6.91

7月27日

29.7

39.1

28.4

10.7

29.59

0.11

10.59

7月28日

29

33.3

27.7

5.6

28.97

0.03

5.57

7月29日

28.4

43.9

28.3

15.6

28.44

-0.04

15.64

7月30日

29.3

46

28.5

17.5

29.23

0.07

17.43

8月1日

27.8

45.7

28.1

17.6

27.91

-0.11

17.71

8月2日

29.7

46.8

29

17.8

29.59

0.11

17.69

8月3日

30

49.2

29.5

19.7

29.85

0.15

19.55

8月4日

31.8

51.7

31.1

20.6

31.43

0.37

20.23

8月5日

30

50.5

31.9

18.6

29.85

0.15

18.45

8月6日

31.2

45.8

32.1

13.7

30.91

0.29

13.41

8月7日

33.3

46.8

32.6

14.2

32.75

0.55

13.65

8月8日

32.6

46

32.8

13.2

32.14

0.46

12.74

8月9日

33.8

46.2

33.7

12.5

33.19

0.61

11.89

8月10日

34.3

45.7

34.2

11.5

33.63

0.67

10.83

8月11日

34.3

46.4

33.9

12.5

33.63

0.67

11.83

8月12日

36.3

53

35.2

17.8

35.39

0.91

16.89

☆内外温度差=推計気化熱相当分+暫定日陰効果相当分

例えば、8月12日のデータで見ると、

千葉市の気温(36.3度)を、カーテン内の推計式に代入することで、「推計カーテン内」(35.39度)が導き出されます。両値の差が「推計気化熱相当分」(36.3-35.39=0.91)となるわけです。

一方で、「カーテン」内外の実測温度差は17.8度ですから、ここから「推計気化熱相当分」を差し引くと、「暫定日陰効果相当分」(16.89度)が出てくることになります。「暫定」と断っているのは、全体から推計値を差っ引いただけで、なんら検証していないためです。

ここで、それぞれの効果相当分が気温とどんな関係にあるのかを見てみましょう。
気温と効果の関係.jpg
X軸に千葉市の最高気温をY軸に「推計気化熱相当分」と「暫定日陰効果相当分」をとっています。このうち下の緑線の上に、きれいに一直線に並んでいるのが、「推計気化熱相当分」です。

直線上に並ぶのは当たり前で、推計式に当てはめて算出しているからです。仮説に沿った理論値です。

一方で、「暫定日陰効果相当分」はまったく無秩序に座標上にばらまかれています。
推計式を示す直線を引いていますが、R²は0.00ですから、少なくともこのデータからは、関係性は見つけられないということになります。

では、「暫定日陰効果相当分」は何と関係があるかというと、「カーテン」外の値です。
下のグラフは、X軸に「カーテン」外の最高温度、Y軸に「暫定日陰効果相当分」を取っています。
カーテン外と暫定日陰効果の相関.jpg

R²は約0.8で、関係はかなり強いといえます。

さて、これで、

1)千葉市の最高気温から、「緑のカーテン」内の最高温度の推計が可能になり
2)千葉市の最高気温から、「緑のカーテン」内の推計最高温度を差し引くことで、「気化熱相当分」の推計も可能になり
2)「緑のカーテン」外の最高温度から、「日陰効果相当分」の推計が可能になりました。

これらの推計を実際の観測データに当てはめたグラフは次のようになります。

「カーテン」内外の温度差と推計の日陰効果、気化熱効果
気化熱、日陰効果推計と実計測値.jpg
緑の線が、日々計測した「緑のカーテン」の内外温度差、オレンジの棒グラフが、温度差のうちの「日陰効果」と推計される部分、赤の棒グラフが温度差のうちの「気化熱相当」と推計される部分です。

実測値と棒グラフ(「日陰」と「気化熱」を積み重ねてます)がほぼ連動していることが分かるかと思います。また、気化熱相当分はほとんど全体に影響を与えていないことも伺えます。

「緑のカーテン」の主要な効果は「日光を遮る」ところに因っていると思われます。

しかし、「緑のカーテン」外の温度がどんな要因で決まるのかは、なお不明です。次は何とかして、これを追求したいところです。

(この項続く)

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