<20度近い温度差をどう解釈すべきか(3)>

<「20度近い温度差をどう解釈すべきか(2)」に続いています>


前回(2)で示したグラフをもう一度。


8.4.3.jpg

改めての解説です。


これは、7月29日から8月3日までの間、X軸に千葉市の最高気温を、Y軸に「カーテン」内外の最高温度をプロットしたグラフです。千葉市の気温は気象庁ホームページから取っています。


このうちの青線は、気温と「カーテン」内の温度の関係を示しています。

青線の方程式は
f(x)=0.84x+4.37です。その意味は、

気温が1度上がるごとに、「カーテン」内の温度は0.84度上がる
②その関係が非常に強固である(R²=0.9)

ことを示していたのでした。

ということは、千葉市の最高気温がわかれば、「カーテン」内の最高温度も9割方、推計できるということになります。実際にそれを示したのが、下のグラフです。
気化熱効果?.jpg
X軸が千葉市の最高気温、Y軸の赤線が「カーテン」内の推計最高温度です。

ここからが思考実験です。

まず、「千葉市の気温と拙宅周囲の気温が等しい」と仮定します。
アバウトな仮定かもしれませんが、千葉市の公式データは他にないので、これを使います。

ちなみに、千葉市の気温測定地(千葉測候所)は拙宅から約7キロの位置にありますが、ともに、海岸から少し奥まったところに位置しています。緯度は測候所が北緯35.606なのに対し、拙宅は35.6433(いずれも、google mapによる)です。

測候所の標高は4メートルで、計測器は地上1.5〜2メートルに設置されているはずですので、観測点は地上5.5〜6メートル程度と思われます。一方、地上4階にある拙宅の標高は計測の結果、約8メートルでした。つまり、標高差は最大でも2.5メートルほどで、気温に与える影響は無視できるほど小さいと思われます。

さて、この仮定を前提に「拙宅周辺の気温」を同じグラフ上で示すと、原点を通る右肩上がり45度の黒線になります。X軸とY軸が同じ数字なのですから、当然ですね。

これで、

「拙宅周辺の気温」と「カーテン」内の温度の関係をモデルにできました。

このモデルでは、「拙宅周辺の気温」が27度の当たりを超えると、「カーテン」内の温度が気温を下回る関係になっています。気温が上がれば上がるほど、「カーテン」内の温度との温度差は広がります。

黄線は両推測値の温度差をグラフにしたものです。

さて、ここからが思考実験の結論部分です。

「緑のカーテン」の効果は

1)日陰になる効果
2)葉から水分が蒸発する時に、気化熱を奪う効果

の二つあることを考えると、この温度差こそが「気化熱」に相当するという仮説が成り立つのではないでしょうか。

そこで、千葉市の気温をもとに、各計測日の「推計気化熱相当分」を計算して見ました。以下がその表です。

(数字はいずれもその日の最高気温、最高温度)



千葉市の気温

カーテン外

カーテン内

推計カーテン内
推計気化熱相当分

(「千葉市の気温」-
「推計カーテン内」)


6月29日

35

38.3

34.1

33.77

1.23

6月30日

33.8

34.3

31.6

32.76

1.04

7月1日

33.7

36.5

32.1

32.68

1.02

7月3日

31.4

37

30.7

30.75

0.65

7月4日

30.8

33

30.5

30.24

0.56

7月5日

31.4

35.1

31.3

30.75

0.65

7月6日

32.1

38.7

32.6

31.33

0.77

7月7日

29.3

32.8

29

28.98

0.32

7月8日

30.2

29.4

28.1

29.74

0.46

7月9日

30.5

34.2

31

29.99

0.51

7月10日

31.5

35.3

31.5

30.83

0.67

7月11日

31.9

35

31.5

31.17

0.73

7月12日

31.6

35.4

31.8

30.91

0.69

7月13日

31.4

40.3

31.5

30.75

0.65

7月14日

32.3

42.6

32.1

31.50

0.80

7月15日

33

42.8

32.4

32.09

0.91

7月16日

31.8

40.6

31.3

31.08

0.72

7月17日

33.8

43.1

33.2

32.76

1.04

7月18日

32.4

36

30.7

31.59

0.81

7月19日

29.1

30

28.9

28.81

0.29

7月20日

30.1

34.5

29.8

29.65

0.45

7月21日

23.1

27.1

24.7

23.77

-0.67

7月22日

25.2

44

26.4

25.54

-0.34

7月23日

24.7

32.2

24.3

25.12

-0.42

7月24日

28.2

40.6

28.1

28.06

0.14

7月25日

30.6

42.9

29.8

30.07

0.53

7月26日

29.5

34.6

27.6

29.15

0.35

7月27日

29.7

39.1

28.4

29.32

0.38

7月28日

29

33.3

27.7

28.73

0.27

7月29日

28.4

43.9

28.3

28.23

0.17

7月30日

29.3

46

28.5

28.98

0.32

8月1日

27.8

45.7

28.1

27.72

0.08

8月2日

29.7

46.8

29

29.32

0.38

8月3日

30

49.2

29.5

29.57

0.43

改めて説明すると、「推計気化熱相当分」とは、千葉市の気温から、千葉市の気温を方程式f(x)=0.84x+4.37に代入して算出された推計「カーテン」内温度を差し引いたものです。

これを見ると、気化熱相当分は、最大でも1.23となっています。
平均で9度に達する「内外温度差」の中で、気化熱の占める割合は、相当に小さいことが、このモデルに示唆されていると思います。

ちなみに、気化熱相当分の最大値が出たのは、計測初日の6月29日です。気象庁の公式な観測データでは、8月3日までの間で最高値はこの日なのです。
実は、「緑のカーテン」内の最高温度も6月29日に記録していまして、私はそれを「カーテンが成長していなかったため」と考えていました。そういう要素が全然ないとはいえないと思いますが、やはり気温自体が高かったのです。もっと早く気づくべきでした。

(この項続く)


コメント

タイトルとURLをコピーしました