<「20度近い温度差をどう解釈すべきか(2)」に続いています>
前回(2)で示したグラフをもう一度。

改めての解説です。
これは、7月29日から8月3日までの間、X軸に千葉市の最高気温を、Y軸に「カーテン」内外の最高温度をプロットしたグラフです。千葉市の気温は気象庁ホームページから取っています。
このうちの青線は、気温と「カーテン」内の温度の関係を示しています。
青線の方程式は
f(x)=0.84x+4.37です。その意味は、
①気温が1度上がるごとに、「カーテン」内の温度は0.84度上がる
②その関係が非常に強固である(R²=0.9)
ことを示していたのでした。
ということは、千葉市の最高気温がわかれば、「カーテン」内の最高温度も9割方、推計できるということになります。実際にそれを示したのが、下のグラフです。

X軸が千葉市の最高気温、Y軸の赤線が「カーテン」内の推計最高温度です。
ここからが思考実験です。
まず、「千葉市の気温と拙宅周囲の気温が等しい」と仮定します。
アバウトな仮定かもしれませんが、千葉市の公式データは他にないので、これを使います。
ちなみに、千葉市の気温測定地(千葉測候所)は拙宅から約7キロの位置にありますが、ともに、海岸から少し奥まったところに位置しています。緯度は測候所が北緯35.606なのに対し、拙宅は35.6433(いずれも、google mapによる)です。
測候所の標高は4メートルで、計測器は地上1.5〜2メートルに設置されているはずですので、観測点は地上5.5〜6メートル程度と思われます。一方、地上4階にある拙宅の標高は計測の結果、約8メートルでした。つまり、標高差は最大でも2.5メートルほどで、気温に与える影響は無視できるほど小さいと思われます。
さて、この仮定を前提に「拙宅周辺の気温」を同じグラフ上で示すと、原点を通る右肩上がり45度の黒線になります。X軸とY軸が同じ数字なのですから、当然ですね。
これで、
「拙宅周辺の気温」と「カーテン」内の温度の関係をモデルにできました。
このモデルでは、「拙宅周辺の気温」が27度の当たりを超えると、「カーテン」内の温度が気温を下回る関係になっています。気温が上がれば上がるほど、「カーテン」内の温度との温度差は広がります。
黄線は両推測値の温度差をグラフにしたものです。
さて、ここからが思考実験の結論部分です。
「緑のカーテン」の効果は
1)日陰になる効果
2)葉から水分が蒸発する時に、気化熱を奪う効果
の二つあることを考えると、この温度差こそが「気化熱」に相当するという仮説が成り立つのではないでしょうか。
そこで、千葉市の気温をもとに、各計測日の「推計気化熱相当分」を計算して見ました。以下がその表です。
(数字はいずれもその日の最高気温、最高温度)
日 |
千葉市の気温 |
カーテン外 |
カーテン内 |
推計カーテン内 |
推計気化熱相当分
(「千葉市の気温」- |
|---|---|---|---|---|---|
6月29日 |
35 |
38.3 |
34.1 |
33.77 |
1.23 |
6月30日 |
33.8 |
34.3 |
31.6 |
32.76 |
1.04 |
7月1日 |
33.7 |
36.5 |
32.1 |
32.68 |
1.02 |
7月3日 |
31.4 |
37 |
30.7 |
30.75 |
0.65 |
7月4日 |
30.8 |
33 |
30.5 |
30.24 |
0.56 |
7月5日 |
31.4 |
35.1 |
31.3 |
30.75 |
0.65 |
7月6日 |
32.1 |
38.7 |
32.6 |
31.33 |
0.77 |
7月7日 |
29.3 |
32.8 |
29 |
28.98 |
0.32 |
7月8日 |
30.2 |
29.4 |
28.1 |
29.74 |
0.46 |
7月9日 |
30.5 |
34.2 |
31 |
29.99 |
0.51 |
7月10日 |
31.5 |
35.3 |
31.5 |
30.83 |
0.67 |
7月11日 |
31.9 |
35 |
31.5 |
31.17 |
0.73 |
7月12日 |
31.6 |
35.4 |
31.8 |
30.91 |
0.69 |
7月13日 |
31.4 |
40.3 |
31.5 |
30.75 |
0.65 |
7月14日 |
32.3 |
42.6 |
32.1 |
31.50 |
0.80 |
7月15日 |
33 |
42.8 |
32.4 |
32.09 |
0.91 |
7月16日 |
31.8 |
40.6 |
31.3 |
31.08 |
0.72 |
7月17日 |
33.8 |
43.1 |
33.2 |
32.76 |
1.04 |
7月18日 |
32.4 |
36 |
30.7 |
31.59 |
0.81 |
7月19日 |
29.1 |
30 |
28.9 |
28.81 |
0.29 |
7月20日 |
30.1 |
34.5 |
29.8 |
29.65 |
0.45 |
7月21日 |
23.1 |
27.1 |
24.7 |
23.77 |
-0.67 |
7月22日 |
25.2 |
44 |
26.4 |
25.54 |
-0.34 |
7月23日 |
24.7 |
32.2 |
24.3 |
25.12 |
-0.42 |
7月24日 |
28.2 |
40.6 |
28.1 |
28.06 |
0.14 |
7月25日 |
30.6 |
42.9 |
29.8 |
30.07 |
0.53 |
7月26日 |
29.5 |
34.6 |
27.6 |
29.15 |
0.35 |
7月27日 |
29.7 |
39.1 |
28.4 |
29.32 |
0.38 |
7月28日 |
29 |
33.3 |
27.7 |
28.73 |
0.27 |
7月29日 |
28.4 |
43.9 |
28.3 |
28.23 |
0.17 |
7月30日 |
29.3 |
46 |
28.5 |
28.98 |
0.32 |
8月1日 |
27.8 |
45.7 |
28.1 |
27.72 |
0.08 |
8月2日 |
29.7 |
46.8 |
29 |
29.32 |
0.38 |
8月3日 |
30 |
49.2 |
29.5 |
29.57 |
0.43 |
改めて説明すると、「推計気化熱相当分」とは、千葉市の気温から、千葉市の気温を方程式f(x)=0.84x+4.37に代入して算出された推計「カーテン」内温度を差し引いたものです。
これを見ると、気化熱相当分は、最大でも1.23となっています。
平均で9度に達する「内外温度差」の中で、気化熱の占める割合は、相当に小さいことが、このモデルに示唆されていると思います。
ちなみに、気化熱相当分の最大値が出たのは、計測初日の6月29日です。気象庁の公式な観測データでは、8月3日までの間で最高値はこの日なのです。
実は、「緑のカーテン」内の最高温度も6月29日に記録していまして、私はそれを「カーテンが成長していなかったため」と考えていました。そういう要素が全然ないとはいえないと思いますが、やはり気温自体が高かったのです。もっと早く気づくべきでした。
(この項続く)

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